人の手の主な機能は,物体の把持や操作であり,特に手指対立運動が重要な役割を担う.近年,脳卒中上肢麻痺の治療法として,随意運動介助型電気刺激装置(IVES)の有効性が報告されている.しかし,多 くは手指伸筋に対し使用した報告であり,手指対立運動への IVES を使用した報告は我々が渉猟した限りで はなかった.今回,上肢近位部の麻痺は軽度で,手指の屈伸は可能だが手指対立運動が困難であった亜急性期脳卒中患者に対しIVES と課題指向型練習を併用した.結果,上肢機能の改善を認めニードである包丁操 作が可能となった.手指対立運動への IVES と課題指向型練習の併用療法は,上肢機能改善の一手段となる可能性が示唆された.