地域共生社会においては,これまでの縦割りの福祉システムから横割りのシステムへの転換,断らない相談支援や参加支援,地域づくり支援などを行う必要があり,その支援の担い手となる社会福祉士をはじめとしたソーシャルワーカーには,多様な属性が複雑に含まれたケースに対応する能力や,多機関協働での包括的支援,地域づくり支援の技術などが求められている.
本研究では,実際に支援の最前線で支援を展開する社会福祉士をはじめとしたソーシャルワーカーが,地域共生社会をどのように捉え,地域共生社会の目指す支援のあり方に対応できているのかどうか,出来ているとすればそれを可能にしている要因は何か,出来ていないとすればそれを阻害する要因は何かを明らかにすることを目的とする. A県において,2023年度の段階において重層的支援体制整備事業を実施している自治体の相談支援包括化推進員として支援を行っている社会福祉士3名,およびそれ以外の自治体において,基幹型地域包括支援センター(以下,基幹型包括)でソーシャルワーク業務を行っている社会福祉士4名を対象とした.両者を比較することで,重層的支援体制整備事業実施の有無等により,両者の現状と課題について比較検討することを意図した.
調査の結果、基幹型包括と,重層実施自治体のソーシャルワーカーでは,包括的な支援の実施の程度に応じて,地域共生社会のイメージや実際の支援の取り組み,課題の認識について相応の相違がみられることがわかった.特に重層的支援体制整備事業の実施は,社会福祉士をはじめとしたソーシャルワーカーに地域共生社会に向けたソーシャルワーク支援を行うことを意識させ,またその支援基盤を構築することに寄与していることが示唆される.
一方地域共生社会の実現を目指したソーシャルワーク機能をより発揮させるためには,総じて地域共生社会に取り組む各関係者の「規範的統合」の重要性,それに基づく適切な連携・役割分担の必要性,必要な人的資源,社会資源,財源の確保の必要性,包括的な支援を担いえる社会福祉士をはじめとしたソーシャルワーカー自身の専門性の向上の必要性などが示唆された.