本研究は、地域共生社会におけるソーシャルワーカーの現状と課題を、栃木県内の基幹相談支援センターと独立型社会福祉士に焦点を当てて明らかにすることを目的としたものである 。調査は2023年11月から2024年1月にかけて、基幹相談支援センターの職員3名と独立型社会福祉士4名を対象に半構造化面接法を用いて実施された。調査の結果、「分野横断的な支援」の実施状況について、基幹相談支援センターでは、地域の繋がりの不足や個別支援で手一杯であることなどを理由に、対象者全員が「出来ていない」と回答した 。これに対し、独立型社会福祉士は「独立型だからできる」といった声に代表されるように、分野横断的な支援に強みを持つ側面が示されたものの、成年後見制度の枠を超えた支援の難しさや、居住支援における課題も挙げられた 。また、「地域づくり」については、基幹相談支援センターからは福祉分野以外への展開の難しさが 、独立型からは一人体制(ワンオペ)であることや実践の偏りなどが理由で困難であるとの回答があった 。これらの結果から、ソーシャルワーカーが地域共生社会の実現に向けた支援を十分に行うには、社会的な理解の醸成や、業務を遂行するための人材・財源・社会資源といった環境整備、そして関係機関との連携と適切な役割分担が不可欠であると考察される 。本研究は対象者数が少ないという限界があるため 、今後は重層的支援体制整備事業の実施自治体や精神科病院のソーシャルワーカーなども含めた統合的な分析や、量的研究を進めることが課題である 。