本研究は、地域福祉における「福祉コミュニティ」と「ケアリングコミュニティ」という2つの概念を比較し、今後の地域福祉が目指すべきコミュニティのあり方を考察したものである。比較の結果、1970年代の地域福祉の理論化・実践化の中で構想され、住民主体の活動やサービス構築に重点を置く「福祉コミュニティ」に対し、「ケアリングコミュニティ」は2000年代以降の福祉ニーズの複雑化や社会的孤立といった課題を背景に要請され、「支援-被支援」の関係性を超えたつながりの質や多様な人々を包摂するコミュニティの内実といった、より深い部分を問い直す点に特徴があることが明らかになった。両概念には思想的な連続性も見られるが、複雑化する現代の課題に対応するためには、ケアリングコミュニティが示すようなコミュニティの「質」を深く追求していく視点が重要である。