従来のヒトの腱の機械的特性測定法では等尺性漸増収縮中の超音波画像を用いて腱伸長量を測定し、腱力-伸長曲線における特定力区間の傾きから腱引張剛性(TS)を算出する方法がとられている。近年、筋力測定器を用いて測定される腱の圧縮剛性(CS)が、生体内の腱機械的特性を測定する新たな手法として注目されている。本研究は生体内のアキレス腱における引張剛性と圧縮剛性の関係を明らかにすることを目的とした。30名の若年健常成人を対象とし、TSはBモード超音波検査と筋力測定計を用いて測定し、腱の力-伸長曲線における特定力区間の傾きから算出した。安静時のCSは、踵骨アキレス腱付着部から近位3、4、5、6、7cmの位置で測定した。各測定部位のデータ及びそれらの平均値を用いて相関解析を実施した。TSとCSの関係はスピアマンの順位相関係数で評価した。結果、TSの力間隔にかかわらず、TSとCSの間に相関関係は認められなかった。本結果は、TSとCSの各測定法が異なる腱の機械的特性を評価していることを示唆している。研究者及び臨床医は、これら二つの測定法の特性を考慮し、選択すべきである。
Tomonobu Ishigaki, Tomoya Ishida, Takumi Ino, Takumi Okunuki, Hiroko Yokoyama, Mutsuaki Edama