【はじめに】本研究では片脚着地動作における足部、膝関節、大腿部、体幹の最大合成加速度を測定し、体節部位間の違いおよび性差を明らかにすることを目的とした。
【方法】健常大学生男性17名、女性16名を対象とし、30cm高の台からの片脚 (右脚)着地動作を実施した。慣性計測ユニットを体幹部 (胸骨剣状突起)、大腿部、膝関節 (脛骨粗面)、足背部 (舟状骨部)に装着し、着地衝撃の指標として各部位の最大合成加速度を測定した。また矢状面から撮影した動画より初期接地時における体幹前傾、膝関節屈曲、足関節底屈角度を算出した。統計学的解析では、最大合成加速度について性別と部位を要因とした分割プロットデザインによる分散分析を行い、結果に応じて事後検定を行った。関節角度については2標本t検定にて性別で比較した。
【結果】男女ともに足部 (男性:67.1±11.8G、女性:56.8±9.9G)、膝関節 (男性:28.4±10.4G、女性:29.4±16.9G)、大腿部(男性:20.9±6.5G、女性:6.2±6.0G)、体幹 (男性:5.4±1.2G、女性:6.1±1.3G)の順に最大合成加速度は減じ、すべての体節間に有意差を認めた。性別と部位の交互作用が有意であり、足部加速度と大腿部加速度は女性に比べ男性で有意に高値を示した。体幹前傾角度 、膝関節屈曲角度、足関節底屈角度において男女間に有意差を認めなかった。
【考察】男女ともに足部で受けた加速度は体幹に到達するまでに10%前後まで低減した。なかでも膝関節までで50%前後まで低減しており、足関節機能が衝撃吸収に重要と考えられた。また男性は足部剛性が高いことから足部加速度が高値となったと考えられる。男性では大腿部加速度が高値であったことから、他関節に比べ衝撃吸収における膝関節での貢献が相対的に小さい可能性がある。しかし接地時の下肢関節角度に性差はなかったことから、着地姿勢に加えて筋・腱機能や筋活動の違いについて検討する必要がある。
横山寛子, 逸見瑠生, 千々松雅人, 津田英一