【目的】高校生女子バスケットボール選手を対象に膝前十字靭帯(ACL)損傷予防トレーニングを実施し、トレーニング開始時年齢の違いが膝・股関節周囲筋力および片脚着地動作時の下肢関節キネマティクスの変化に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は高校3年生から予防トレーニングを開始した選手7名(3年生群)と、高校1年生から開始した選手12名(1年生群)とした。股関節機能と動作指導に着目したACL損傷予防トレーニングを練習時のウォーミングアップとして6か月間実施した。トレーニング開始前と6か月後に膝関節伸展・屈曲、股関節外転の求心性等速性筋力を測定した。また、30cm台からの片脚着地動作における初期接地(IC)時と最大膝関節屈曲時の膝関節屈曲角度、外反角度、股関節屈曲角度、外転角度を求めた。統計学的解析は群間とトレーニング前後(時期)を要因とした分割プロットデザインによる分散分析を行い、交互作用があった場合には水準ごとに事後検定を行った。
【結果】膝関節屈曲筋力において群間に主効果を認め、1年生群より3年生群が有意に高値を示した。股関節外転筋力、IC時の膝関節屈曲角度、股関節屈曲角度、最大膝関節屈曲時の股関節屈曲角度、股関節内転角度において時期に主効果を認め、開始前に比べ6か月後で有意に増加していた。IC時の膝関節屈曲角度で交互作用を認め、6か月後に3年生群より1年生群が有意に高値を示し、1年生群では開始前より6か月後で有意に増加していた。
【結論】高校生女子バスケットボール選手においては、より早期からACL損傷予防トレーニングを開始することで、着地動作時の下肢関節キネマティクスへの効果が得られやすいと考えられた。
逸見瑠生, 横山寛子, 千々松雅人, 津田英一