【目的】高校生女子バスケットボール選手のうち、入学時から3年生の競技引退まで継続して膝前十字靱帯(以下ACL)損傷予防トレーニングを実施した選手を対象として、膝・股関節周囲筋筋力と片脚着地動作における下肢関節キネマティクスの変化を明らかにすることである。
【方法】同一チームの選手13名に対し、股関節機能と動作指導に着目したACL損傷予防トレーニングを高校競技期間中の2年7か月間実施した。筋力は膝関節伸展・屈曲、股関節外転・内転の求心性等速性収縮筋力を測定し、ピークトルク体重比(Nm/kg)を算出した。下肢関節キネマティクスは30cm台片脚着地動作とし、初期接地時
と最大膝関節屈曲時の膝関節屈曲角度及び外反角度、股関節屈曲角度及び内転角度を測定した。軸脚を解析対象として、トレーニング実施前と実施後における各測定項目を比較した(対応のあるt検定)。軸脚はレイアップシュートの踏切脚とした。
【結果】実施前後の筋力は股関節外転が1.50Nm/kg、1.90Nm/kg、股関節内転が0.85Nm/kg、1.03Nm/kgと有意に増加した。膝関節伸展・屈曲では有意な変化がなかった。下肢関節キネマティクスにおいては実施前後で、初期接地時の膝関節屈曲角度が開始前は19.0°、31.8°、股関節屈曲角度が38.0°、44.6°と有意に増加した。
【考察】2年7か月間のACL損傷予防トレーニングにより、股関節周囲筋筋力と初期接地時における矢状面下肢関節キネマティクスで有意な変化がみられた。
逸見瑠生, 横山寛子, 千々松雅人, 津田英一