体操競技では上肢への荷重機会が多いが,実際の競技中における手関節への衝撃評価は十分に行われていない.本研究では体操競技中の手関節の加速度測定を行い手関節に生じる衝撃の種目ごとの違いを検討することを目的とした.対象は高校生体操選手15名30手(男性3名・女性12名)である.衝撃評価には9軸ウェアラブル慣性センサーを使用し,前腕遠位1/3の背側皮膚上に固定し床運動と跳馬を行った.床運動はロンダート(側方倒立回転跳び4分の1ひねり後向き)からの後方転回を行い,跳馬は前方もしくは側方倒立回転跳びを実施した.各種目の手関節加速度を記録し,床運動時のロンダート,後方転回,跳馬の3項目で手を床もしくは跳馬についた際の最大合成加速度を比較した.ロンダート,後方転回,跳馬での最大合成加速度は8.3±2.4G,24.3±4.3G,25.5±10.3Gであり後方転回,跳馬がロンダートと比較し有意に高値を示した(p<0.01).跳馬では踏切動作があり,床運動の後方転回に時にはロンダートのスピードが加わったことにより衝撃が大きくなった可能性がある.
(西村信哉, 逸見瑠生, 千々松雅人, 前田和志, 佐藤翔, 川岸亮, 古川寿文, 小田桐紅葉, 横山寛子, 津田英一)