本研究では小中学生男子サッカー選手を対象に、成長段階ごとの静的および動的膝関節内反アライメントの特徴を横断的に明らかにすることとした。
対象は、地域サッカークラブに所属する8~15歳の男子サッカー選手73名とした。年齢により推定される思春期の成長段階(Memmelら、2024; Praderら、1989)をもとに、8~11歳を「思春期前」、12~14歳を「思春期」、15歳を「青年期」とし、3つのカテゴリーに分類した。静的および動的膝関節内反アライメントの評価を以下の方法で実施した。静的評価では閉脚立位姿勢における両大腿骨内側顆間距離・内果間距離と膝関節内外反角度を測定した。動的評価では、Counter Movement Jump(CMJ)における着地初期接地時(以下、IC)および最大膝関節屈曲(以下MKF)時における両膝関節中央間距離と両足関節中央間距離を測定し、それらの比(以下、K/A ratio)を算出した。統計学的解析として各評価項目を3カテゴリー間で比較した。また静的評価と動的評価間の関連について検討した。「思春期前」は29名、「思春期」は38名、「青年期」は6名にカテゴリー分類された。大腿骨内側顆間距離において「思春期前」および「思春期」と比べ、「青年期」で有意に高い値を示した。利き脚膝関節内反角度において、「思春期前」と比べ「思春期」と「青年期」で有意に高値を示したが、非利き脚では有意差は認めなかった。CMJのIC時およびMKF時のK/A ratioでは有意差は認めなかった。両大腿骨内側顆間距離・内果間距離および利き脚・非利き脚膝関節内外反角度とCMJのIC時およびMKF時のK/A ratioには有意な相関は認めなかった。
閉脚立位での大腿骨内側顆間距離は「青年期」に有意な増加が認められ、Memmelらの報告と同様の結果となった。また利き脚において、「思春期」および「青年期」で有意な膝関節内反角度が高値を示した。サッカーのキック動作では膝関節や股関節の屈伸動作だけではなく、対角に動かすクロスモーションを伴うため、膝関節内反モーメントの増大がみられるとの報告もあり、本研究の結果からもキック動作の繰り返しが膝関節内反アライメントに影響している可能性が考えられた。
(横山寛子, 川崎惣一朗, 下平茂晴)