【目的】本研究の目的は、アキレス腱のcompressive stiffness(CS)の部位差を明らかにすることに加え、アキレス腱のCSとtensile stiffness(TS)との関連を検討することである。【対象と方法】健常若年男性14名(21.6±2.0歳、173.9±5.0cm、65.2±6.8kg)を対象とした。腱CSは、押圧式組織硬度計MyotonProを使用し、被験者の足関節は底背屈中間位として、アキレス腱踵骨付着部から近位方向へ3、4、5、6、7cm部位にて測定した。腱TSは、超音波法を用い、足関節底屈筋等尺性収縮を行った際の腱の張力-伸張量関係における線形領域の傾きから算出した。【結果】CSは、踵骨付着部から離れるにつれて減少した(P<0.01)。しかし、CSとTSとの間に有意な相関関係は認められなかった(P>0.05)。【考察】腱付着部における腱・未石灰化軟骨層・石灰化軟骨層・骨という組織硬度の異なる4層構造が応力分散に貢献することを考慮すると、アキレス腱付着部から近位部にかけての腱stiffnessの段階的減少もまた、腱へのストレスの減少に貢献している可能性がある。さらに、安静時でのCSは張力-伸長量関係で表されるTSとは関連しなかったことから、本研究結果は、CSとTSとでは異なる腱力学的特性を評価していることを示唆する。
石垣智恒、石田知也、井野拓実、奥貫拓実、横山寛子、江玉睦明