本研究では、人工膝関節全置換術後の身体機能が低下した患者(70代女性、Short Physical Performance Battery score:7点)に対し、ウェアラブルセンサーを用いたバイオフィードバック歩行練習の効果を検証した。フィードバックは、前遊脚期における足関節底屈角度が快適歩行時より20%以上増加した際にリアルタイムに聴覚刺激を与えるものであり、1日6分間の歩行練習を5日間施行し、両側の足関節底屈動作を促した。介入前後で歩行速度および関節角度を比較し、運動学的な変化を前後比較デザインにて評価した。その結果、快適歩行速度は介入前の0.65 m/sから介入後0.87 m/sへと、最小臨床的重要差を大きく上回る増加を示した。フィードバックを行った足関節底屈角度は24.3%減少し、下肢伸展角度や股関節伸展角度が21.0〜69.3%増加した。ウェアラブルセンサーによるフィードバックを用いた歩行練習は、身体機能の低下した高齢患者において歩容の変化を伴う歩行速度を向上させる可能性が示された。
支援工学理学療法学会誌 5(1), 11-19, 2025
下世 大治, 宮﨑 宣丞, 荒木 草太, 竹下 康文, 松浦 央憲, 赤﨑 義彦, 福崎 弘樹, 川田 将之, 木山 良二