【はじめに】
本研究は回復期脳卒中片麻痺者を縦断的に計測し、歩行速度のMIDを上回る改善を示した脳卒中患者が獲得した歩行戦略と患者の特性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
本研究デザインは多施設前向きコホート研究とし、2施設で実施した。対象は研究施設に2か月以上入院し、初回評価時に歩行速度が0.80m/s未満であった初発脳卒中片麻痺者32名とした (69.3 ± 11.9歳)。評価は入院時あるいは歩行監視で可能となった時点を初回評価とし、その1か月後に2回目の評価を実施した。評価項目は、身体機能を下肢Fugl-Meyer assessment、Berg Balance Scale (BBS)、歩行機能は6分間歩行距離と10m歩行テスト時の歩行速度、ケイデンス(Ca)、ストライド長(SL)とした。10m歩行テストにおける初回評価から2回目評価時にSLのみ増加した者をSL群、Caのみ増加した者をCa群、両方とも増加した者をSL & Ca群とし、歩行戦略ごとに3群に分けた (Tateuchi, 2021)。さらに、歩行戦略の各群内で回復期脳卒中患者の歩行速度のMIDである0.16m/s
以上の改善を得た者を高改善群、それ以外の者を低改善群の2群に分類した。統計学的検定は, 歩行戦略における高・低改善群の偏りを検討した。次にMIDの2群間の初回評価、2回目から初回評価の差分を比較した。MIDを上回った高改善群の特徴を明らかにするために、ロジスティック回帰分析 (強制投入) を行った。
【結果】
SL群が6名、Ca群が7名、SL & Ca群が19名であった。MIDを上回る改善を得られた高改善群はSL&Ca群が13名であり、他の2群は0名であった。歩行戦略と改善群に偏りを認めた (P < 0.01)。高改善群と低改善群の群間の比較では初回評価時に罹病期間、BBSで有意な差を認めた (P < 0.05)。評価間の差分では歩行速度、SL、Ca、6分間歩行距離が有意な差を認めた (P < 0.01)。高・低改善群におけるロジスティック回帰分析では、説明変数は罹病期間、BBSとし、BBS (P < 0.05、オッズ比1.17、95%信頼区間1.00-1.37)、罹病期間 (P = 0.06、オッズ比0.97、95%信頼区間0.93-1.00) であった。
【結論】
MIDを上回る歩行速度の改善にはSL、Ca両方を増加する歩行戦略が必要であり、身体機能ではバランス能力が関連する可能性が示唆された。