【目的】本研究の目的は回復期脳卒中片麻痺者の効率的な歩行を獲得するためにPCIと身体機能・歩行パラメータの関連性を検証することである。
【方法】対象は回復期病棟に入棟した初発脳卒中片麻痺患者13名とした。歩行を計測するために仙骨後面,両側の大腿・下腿・足部前面にウェアラブルセンサー を計7個貼付した。また,脈拍の測定には非麻痺側の耳朶にパルスオキシメーター を使用した。歩行測定は回復期病棟に入棟し,Functional Ambulation Category (FAC) 3以上に達した段階で実施した。歩行の測定は助走路 (各2m) を含めた12m歩行路で快適歩行を2回実施し,中央の5歩行周期の加算平均を代表値とした。PCIの測定には6分間歩行テストを用い,テスト前の安静座位3分間の平均脈拍を安静時脈拍,テスト終了後の3秒間の平均脈拍を歩行後脈拍とした。なお,歩行パラメータの測定と6分間歩行テストは同日に行った。評価項目は,身体機能として下肢Fugl-Meyer assessment (FMA) とBerg Balance Scaleを,歩行パラメータは歩行速度,ケイデンス,ストライド長,ステップ時間およびスイング時間の対称性 ,両側の各セグメントの運動範囲,骨盤加速度の3軸加速度計で算出した自行相関係数で算出した歩行の対称性を用いてPCIとの関連性を検証した。統計学的検定にはデータ分布の正規性に応じて,ピアソン積率相関係数,スピアマンの順位相関係数をそれぞれ用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】PCI (0.76±0.54 拍/m) と有意な関連性を示した項目は,FMA (r = -0.75,P = 0.003) ,前後方向の歩行対称性 (r = -0.59,P = 0.034),鉛直方向の歩行対称性 (r = -0.70,P = 0.008) ,非麻痺側下腿の運動範囲 (r = -0.63,P = 0.021),麻痺側足部の運動範囲 (r = -0.63,P = 0.022) ,非麻痺側足部の運動範囲 (r = -0.66,P = 0.013)であった。 BBSは有意な関連性を示さなかった (r = -0.48,P = 0.098) 。
【考察】 本研究の結果より,回復期病棟に入棟し, FAC 3以上に達した段階では,FMAに加え、非麻痺側下肢の振り出しが十分に確保できる対称的な歩行がPCIと関連し,効率的な歩行に寄与することが示唆された。
荒木草太、松浦央憲、東條竜二、中村俊博、竹下康文、松澤雄太、宮﨑宣丞、指宿勝巳、足立貴志、中井雄貴、川田将之、木山良二