1990年代以降、<感受性>の研究は、医学言説を踏まえ、身体との関係性に焦点を当てて行われてきたが、本研究は、共同体における個人(間)の<感受性>の役割という観点から、近代商業社会における「美学」の問題に結びつけて議論する。具体的には、以下の3点から、<感受性>の再検討を行う。商業社会の進展を背景にした経済、軍事、科学、「美学」言説など諸言説において、① 肉体と精神の関係性の再定義の過程を確認し、② 感覚/感性がもつ意味の変容と多様化の過程を明らかにしつつ、③新たな価値観のもとで「文学」が果たす新たな機能と「美学」の関係に注目して、<感受性>の新たな意味を明らかにする。