論文

基本情報

氏名 佐藤 恵
氏名(カナ) サトウ メグミ
氏名(英語) Sato Megumi
所属 教育学部 教育学科(中等教育専攻)
職名 准教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

題名

商業社会におけるゴシックの残滓―恐怖に取り憑かれたティルニー将軍

単著・共著の別

単著

概要

ジェイン・オースティンが本格的に創作活動を行なった1790年代から1810年代は、対仏戦争を通じて「イギリス的なるもの」への志向が高まると同時に、正貨の流出により1797年に銀行制限法が制定され、イングランド銀行の兌換停止によって金融不安がもたらされていた時期である。オースティンもこうした社会構造の変化に無関心だったわけではなく、四兄ヘンリーは、オックスフォードシャー義勇軍での主計官の職務や貴族・上級将校との軍人脈を通じて、ロンドンで銀行業・軍の代理人業を開設した。本稿では、兄ヘンリーの伝記的事実を踏まえながら、習作作品では銀行家は商業社会の成功者として作中に登場し、土地所有に根ざした旧体制ジェントルマンに対して、彼らの商業社会への不安を象徴しうる存在として登場していることを考察した。さらに、商業社会の観点から初期作品『ノーサンガー・アビー』(1818死後出版)を考察することで、社会構造の変容に伴う経済的プレッシャーにさらされ、商業社会への不安に強迫的なほどに備える地方地主としてティルニー将軍が描かれていることを明らかにした。ティルニー将軍は大規模な農地改良や厳格な時間規律によって地所管理を行い、かつ、公職を保有し、国内産業の促進と称して国産品を次々と購入することによって、私的な富や奢侈を求めて働く新興ジェントルマンとの差別化を図ろうとしている。作中強調されるのは将軍の「感受性の欠如」であり、商業社会のもたらす経済的プレッシャーに囚われて無感覚となった姿であることを考察した。

発表雑誌等の名称

日本ジョンソン協会年報 第46号  pp.6-10

発行又は発表の年月

202207