漱石とオースティン―『明暗』における小説創造の模索
明治の文豪、小説家であり英文学者でもあった夏目漱石と、彼が「写実の泰斗」、「則天去私の小説」と高く評価したジェイン・オースティンとの比較研究を行った。漱石が「則天去私」の境地へと達したとされる晩年、未完に終わった最後の小説『明暗』において、どのような小説創造の模索に挑んでいたのか、「則天去私」的小説とはどのようなものだったのかを探った。漱石が『文学論』等で展開したオースティン論に注目し、オースティンの代表作『高慢と偏見』と漱石の『明暗』の比較分析によって論じた。
東北大学英語文化比較研究会 川内レヴュー:英語文化比較研究 第1巻 pp.35-50