本稿では民衆における人間形成と公教育への移行をテーマに、17-19世紀の教育思想と文学における子ども像の変遷に基づき、イギリスで展開されたデイム・スクール(dame school)の教育と人間形成の在り方を検討している。第1章では17-18世紀の教育思想と子ども観を踏まえ、子どもの発見と近代的人間観としての理性的人間観の成立過程を確認する。第2章では民衆文化と人間形成の観点から18-19世紀の民衆文芸と文学作品を捉え、子ども像とデイム・スクールの関係性について考察する。第3章ではデイム・スクールの定義や特徴をまとめ、デイム・スクールが地域共同体のなかで果たした役割や人間形成的意義を明らかにする。そして、民衆における人間形成から公教育への移行に伴い生じた変化を、価値観の共有という視点から考察し、今日求められている「開かれた教育課程」への手掛かりを示す。(pp.124~126)
盛下真優子、佐藤恵