『コーヒー・ハウスあるいはスコットランドの女』(1760)は、スコットランドの牧師・劇作家ジョン・ヒュームが書いた喜劇のフランス語訳版として印刷・上演されたものであるが、実際はフランスの作家・啓蒙思想家ヴォルテールが書いた喜劇である。ヴォルテール自身や百科全書派を批判する評論家フレロンへの報復として、作中ならず者のへぼ作家としてフレロンを風刺したものであるが、従来ほとんど分析の対象になっていない。そこで、ヴォルテールとジョン・ヒューム、さらにはスコットランドの哲学者・歴史家デイヴィット・ヒュームの三者の著作物の関連性を探った。当時七年戦争の最中にあったにもかかわらず、そこには国を超えて啓蒙思想の連繋を見る文人たちの絆が顕れていると言えよう。