本研究の目的は,心理療法の鍵概念が精神的健康に及ぼす影響を,鍵概念間の影響関係を踏まえて,明らかにすることであった。174名の大学生を対象として質問紙調査を行った。その結果,否定的自動思考は精神的健康の指標に対して直接効果を示し,不合理な信念,肯定的自動思考,解決構築,悲観的説明スタイルは直接効果および間接効果を示した。また,理想-現実自己の差異は不合理な信念,否定的自動思考,悲観的説明スタイルおよび解決構築を媒介して精神的健康の指標に対して間接効果を示した。以上より,心理療法の鍵概念は多様な経路で精神的健康に影響を及ぼすことが示された。
pp.189-204
高木源・若島孔文