本研究では,解決志向短期療法の中心的な技法である解決志向の観察課題に基づくセルフケアツールの効果を検討した。解決志向の観察課題の効果を比較検討するために,解決志向の観察課題に取り組む群(解決志向群),問題志向の観察課題に取り組む群(問題志向群),日常生活の観察を求める群(統制群)の3群を設定した。なお,各群の課題は一人で実施可能なセルフケアツールとした。調査協力者84名(男性42名,女性42名,平均年齢=29.81,SD=3.39)を各群に無作為に振り分けた(解決志向群28名,問題志向群28名,統制群28名)。反復測定の分散分析の結果から,解決志向群においてのみ課題の実施後に理想的生活の実現度が高まることが示された。一方で,全ての群において課題の実施後に問題の解決度が高まった。加えて,自己効力感,解決構築,対処方略においては,いずれの群も変化が見られなかった。以上より,解決志向の観察課題は,生活に対する認識を肯定的に変化させる点において有効な手段だと考えられた。
高木 源, 若島 孔文