近年、就労支援の現場では、メンタルヘルスに問題を抱えた就労支援サービス利用者への心理的支援の必要性が高まっている。利用者は、自分の障害と向き合い、訓練の失敗を繰り返すことで、2年という限られた期間の中で就職に向けて努力することが求められる。このような利用者に対してどのような心理的支援が可能で、どのように役立つのかについては、これまで十分な検討がなされてこなかった。本研究では、就労移行支援の場での短時間で実践的なコーチングを活用した4つの事例を報告し、ブリーフコーチングの有効性を検討した。就労移行の心理的支援は、カウンセリングルームでの一般的なカウンセリングと比較して、(1)限られた期間での支援であること、(2) クライアントの周囲に他の利用者がいて、やや非構造的な環境で支援が行われること、(3) 支援者は、就労指導員として、また心理的な支援者として、同時に二重の役割を果たすことが求められる。このような支援の仕組みの下では、ソリューションフォーカス型のアプローチによる簡単なコーチングが有効であることが示唆された。