【目的】高齢心不全患者のADL低下予防を目的とした介入において、身体能力を把握することは重要であるが、安静を要する時期の評価は難しい場合が多い。そこで、患者負担の少ない骨格筋評価として下肢筋厚を測定し、Short Physical Performance Battery(SPPB)の得点との関連を検討した。【方法】入院加療を要した心不全患者58例(男性37名、女性21名、年齢77.9±1±10.8歳)を対象に患者背景因子(心不全の基礎疾患および併存疾患、内服状況、年齢、性別、身長、体重、BMI、NYHA分類、EF、NTproBNP、Hb、eGFR)を調査した。退院前1週間以内の期間に、身体機能評価(SPPB、握力、5m歩行、等尺性膝伸展筋力)および形態測定(大腿部および下腿部の筋厚値と周径値の測定)を行った。統計学的解析は、SPPBの得点に影響を及ぼす因子を重回帰分析にて検討した。【結果】年齢と大腿筋厚が有意な説明変数として選択され、その標準化偏回帰係数はそれぞれ-0.431、 0.300であった。予測式はSPPB(得点)=14.658-0.115×年齢+0.198×大腿筋厚(r2=0.405、 p<0.001)となった。【考察】大腿筋厚値は心不全患者のSPPBを予測する骨格筋評価として有用であることが示唆された。