【はじめに】脳血管疾患に対するリハビリテーションは患者の機能回復に重要な役割を担うが、リハビリテーション処方には地域差が認められる。本研究は、厚生労働省が公表している医科診療行為のレセプト情報データを用いて脳血管等リハビリテーション処方の地域差と、認定・専門理学療法士との関連について明らかことを目的とした。【方法】厚生労働省のNational Data Base(NDB)オープンデータ(2019年度診療分)から、脳血管疾患リハビリテーションに該当する診療コードを抽出し、都道府県別に年齢・性別で調整した標準化レセプト出現比(Standardized claim ratios:SCR)を算出した。各都道府県の認定・専門理学療法士の人数は日本理学療法士協会より入手し、総務省の人口推計から人口10万人あたりの人数を算出した。脳血管等リハビリテーション料SCRと認定・専門理学療法士数の関連を検討するため、Spearmanの順位相関係数を算出した。統計解析はR(version 4.4.2)を用い、有意水準は5%とした。【結果】都道府県別の脳血管疾患リハビリテーション料SCRは、最低値68.4(秋田県)~最高値184.9(高知県)であった。脳血管疾患リハビリテーション料SCRとの間に有意な相関が認められた認定理学療法士の領域は、発達障害(r=0.32, p<0.05)、運動器(r=0.38, p<0.01)、介護予防(r=0.45, p<0.01)、管理・運営(r=0.43, p<0.01)であり、いずれも正の相関を認めた。専門理学療法士の領域については、神経理学療法が脳血管疾患リハビリテーション料SCRと有意な正の相関を認めた(r=0.50, p<0.01)。【考察】本結果により、地域ごとに脳血管リハビリテーション処方に差があること、また、一部の認定・専門理学療法士の密度が高い地域でSCRが増加する傾向が示唆された。これらは、該当領域の専門性が診療行動に影響を及ぼす可能性があるとともに、地域医療資源の配置がリハビリテーション処方に寄与する可能性が示唆された。【結論】リハビリテーション治療の専門知識と技術を持つ理学療法士の育成や適切な配置によって、脳血管リハビリテーション治療機会の均等化が期待される。