累次の施行延期により未だ実現されていない介護福祉士養成施設への介護福祉士国家試験の義務付けに向けた課題を探るべく,介護福祉士養成施設の学生に介護福祉士国家試験の義務付けに対する意識等に関するアンケート調査を実施し,分析を行った。χ 二乗検定とFisher 正確確率検定を用いて分析した結果,属性(日本人学生,留学生)と卒業後の進路に有意差があり,留学生の群は日本人学生の群と比較して介護福祉士国家試験を義務付けるべきと回答する割合が有意に高く,介護分野で就労予定の群は介護分野で就労予定以外の群と比較して介護福祉士国家試験を義務付けるべきと回答する割合が有意に高かった。 介護福祉士国家試験の義務付けに対する意識と国家試験義務付けによる影響について,Kruskal-Wallis test とTukey test により分析した結果,国家試験の義務付けをするべき群は国家試験の義務付けをするべきではない群と比較して,地位の向上と学習意欲の向上について,大いに当てはまると回答する傾向があり,国家試験の義務付けをするべき群はどちらともいえない群と比較して,質の向上と学習意欲の向上について,大いに当てはまると回答する傾向があった。
この結果から、介護福祉士養成施設への介護福祉士国家試験の完全実施に向けて,入学者の確保という経営的な側面のみを重視するのではなく,介護福祉士の質の向上の観点から,留学生も含めた介護福祉教育と介護福祉士国家試験の質の向上を図ることが重要であるとの結論が得られた。