外国人介護職員に対する日本の社会制度の教育ニーズと課題を明らかにすることを目的に、介護施設 4 施設、養成施設 2 施設にインタビュー調査を実施した。介護施設においては,指導者,外国人介護職員ともに,就労当初は社会制度に関する学習よりも,日本語学習,生活支援技術の習得の優先順位を高く設定する傾向があった.介 護福祉士取得を目指す者は,社会制度に関する学習ニーズはあるものの,テキストが理解しにくいと感じており,日々の介護業務において社会制度を意識する機会が少ないため, 知識の定着が難しいという意見があった.なお,介護老人保健施設の指導者より,在宅復 帰施設として施設退所後の生活を想定してサービスを提供する必要があるため,施設退所 後に利用する社会資源の内容と特徴の把握は必要であるとの意見があった. 養成施設の留学生,教員からは,医学に関する専門用語は翻訳ソフトを使って母語に翻 訳することで内容を理解することが可能となるが,社会制度については,その背景となる 知識も含めて理解する必要があるという意見があった.
外国人介護職員の日本の社会制度に関する学習ニーズの有無に影響を与える要因として,介護 福祉士の取得意向の可能性が示唆された.その要因として,本国への技能移転を目的とする技能実習と人手不足対応のための一定の専門性・技能を有する外国人の受入れである特定技能は,日本の 社会制度に関する教育を受ける機会が制度上,十分に想定されていないことが考えられる.今後は, 外国人介護職員に対して,介護福祉士国家試験に対応する日本の社会制度の学習教材の開発に加え て,介護施設において就労する外国人介護職員の介護実践において必要とされる社会制度に関する 知識を明らかにし,その実践力を養えるような教材開発が求められると考えられる.