本稿は事例を通して対人援助現場における「待つ」ことの意味を考察したものである。事例は同級生との問題のために大学生活が困難となった女子学生であった。心理面接を通して同級生との距離を取ることや、学生生活に対して意欲的に向き合うことができていった。最終的に、彼女は被害的な視点から相互的な視点をもって同級生との関係を捉え直すに至った。セラピストがクライエントの主訴や問題を断定することなく、クライエントの可能性に注目して「待つ」姿勢を取り続けることによって、クライエントは自身の可能性に触れ、主体的に主訴や問題に対して取り組むことができるようになった。
pp.281-289