疼痛管理を目的にオピオイド鎮痛薬を処方されている患者の中には、処方されたオピオイド鎮痛薬の不適切使用に陥っている患者も少なくない。この状況は、単なる「大量処方」や「指導不足」として片付けられるべきものではない。むしろ、患者が抱える社会的苦痛や精神・心理的苦痛に対して、薬物が“心の支え”や“日常を保つ手段”として用いられるようになる経過に目を向ける必要がある。このような薬物使用のあり方は、「ケミカルコーピング(chemical coping)」と呼ばれ、近年、がん診療や慢性疼痛の領域で注目されてきた概念である。本稿では、このケミカルコーピングに着目し、その背景にある患者の心理的・社会的苦痛と、それに対する多職種チームによる支援、とりわけ心理職の関与の意義について概説したい。
Anet Vol.29 No.3(通巻88号)p.11-14