本稿は、オピオイド鎮痛薬の不適切使用について、心理専門職の視点からまとめたものである。オピオイド鎮痛薬は強力な鎮痛作用を持つと共に、認知機能や感情、行動にも影響を与えるが故に、ケミカルコーピングなどの乱用リスクが高い。その不適切使用においては、心理社会的要因や精神的ストレスのみならず、そこから生じる自己効力感の低下、セルフスティグマ、スピリチュアルペインといった課題が大きく絡んでいる。従って、不適切使用の軽減・中止を目指すためには、意識されにくい患者の真の希望を明確にして行き、信頼関係を築く中で自尊感情を育み自己効力感を高め、治療への動機付けに繋げる介入が求められる。このような心理学的支援は、心理専門職だけでなく多職種が連携して行うことが不可欠である。全ての診療スタッフが心理的対応で困らないようサポートすることも、心理専門職の重要な職責であり、患者のQOL向上に大きく寄与すると考える。
武村尊生、山口重樹
慢性疼痛 43巻1号 Page12-18(2024.12)