演者は現在,がん患者や慢性疼痛を訴える患者の診療に心理専門職として携わっている.本領域では,疼痛コントロール等をはじめとした身体的アプローチと並行し,心理社会的背景についての心理学的アセスメントと,それに基づく精神・心理的アプローチも重要である。
心理学的アセスメントとは,診療場面における面接や観察,臨床心理検査等の結果を通じて,患者を多角的視点から捉え,その患者が対峙している問題などを明らかにしていくことである.これは心理専門職の重要な職責の一つと言えよう.一方ヒトの「こころ」とは,直接その手で触れることができないばかりか,目にも見えないものである.それをどのように評価するのか,アセスメントから得られた情報をいかに適切に客観化するのか,それを患者本人と診療に携わるスタッフといかに共有するか,といった問題は議論が尽きない.
当日は,心理学的アセスメントの概要と特徴,効用と限界について触れつつ,演者の臨床経験に基づき,痛みを訴える患者のこころのうちを紹介し,対応が難しい患者に携わる医療者の困難感をどう評価するかについても論じた。
〇武村尊生