【目的】地域がん診療連携拠点病院の指定要件追加に伴い、市立函館病院(以下、当院)でも令和5年、自殺予防フローチャートが整備された。しかし運用に当たり「患者対応に自信が無い」「苦手意識がある」と訴える看護職員が多かったため、院内研修会を開催すると共に、看護師の自殺予防対応力向上に向けた課題を抽出した。
【方法】令和5年秋に当院で開催された自殺予防研修会に参加し、研究に同意を得られた当院看護職員57名に対し、「臨床経験年数」「希死念慮を訴えられた・自殺企図に遭遇した経験の有無」「研修受講前後での自信の程度(①死にたいと訴える患者、②自殺企図後の患者、③自殺企図患者の家族、④自殺企図に遭遇した医療者、それぞれに対応できる自信の程度を0~100で数値化)」を、無記名のアンケート方式で調査した。なお、本研究は当院研究倫理委員会の承認を得ている。
【結果】対象看護師のプロフィールは第一報をご参照いただきたい。①死にたいと訴える患者に対応できる自信は、研修受講前も受講後も、希死念慮を訴えられた経験のある群の方が無い群に比し有意に高かった。また、②自殺企図後の患者に対応できる自信は、研修受講前のみ、希死念慮を訴えられた経験のある群の方が無い群に比し有意に高かった。その他に有意差を認めたものはなく、自殺企図に遭遇した経験の有無では自信の程度に有意差を一切認めなかった。
【考察】希死念慮を訴えられた経験は、次に自殺関連行動に遭遇しても対応できるという自信に繋がる傾向が考えられたが、自殺企図に遭遇した経験は自信に繋がらないことが示唆された。前者では成功体験を得た者が多いと想定されるのに対し、後者ではトラウマに近い体験になった可能性がある。今後自殺企図に遭遇するかもしれない看護師の、職業上の自尊心を守るためにも、学習機会を設けること自体が重要と思われた。