本邦では,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種後に体調不良を訴えるなどの副反応が多発し,社会問題となった。副反応の一つとして痛みを訴える患者も散見され,当施 設でも積極的に対応している.今回,HPV ワクチン接種後に解離性神経症状反応(DNSR) を呈した症例を経験したので報告する.
症例は、10代,女性。既往歴特記なし。接種翌朝から両下 肢麻痺が出現した.接種 1 週間後に,HPV ワクチンの副反応に対する協力医療機関に指定されている当院受診となった。初診時,担当窓口であった当科で医師と臨床心理士で丁寧に問診,診察,鑑別診断のため総合診療内科,脳神経内科にて診察を続けたところ,「あれ,足 が動くようになった」と突然患者が訴え,独歩にて帰宅するに至った.以降,経過観察の受診及び、公認心理師による心理面接を当科で続けているが,再発に至っていない.
世界保健機関では接種ストレス関連反応(ISRR)という概念を提唱し,思春期の予防接種後の副反応の存在と対応について啓発している。DNSR は ISRR の遅発性反応の一つで,予防接種後に痛みを訴える患者を診察する可能性がある痛みの患者に出会った際は,はその詳細を熟知し,適切に対応しなければならないことを述べた。