近年、がんの診断・治療技術は格段に進歩し、多くのがんサバイバーが社会生活を送っており、今後さらに増加していくものと予測されている。そのため、この先「がんとともにこの先どう生きていくか」という視点からの支援が必要である。
がんサバイバーが抱えている問題は多岐にわたるが、その中でも疼痛は、身体的問題と心理・社会的問題の両方に大きく関わる苦痛である。最近の傾向として、がん治療の多様化・長期化に伴い、患者が受ける心理社会的側面への影響は大きく、疼痛が慢性化する要因の一つであると考えられる。
また、がんの疼痛緩和を目的に処方されるオピオイド鎮痛薬などの使用が長期化する中、ケミカルコーピングをはじめとした、不適切使用などの様々な問題が表面化している。その背景には、不十分な疼痛コントロールに加え、患者が抱えている様々な生きづらさが併存していることが多い。
これらの問題に対しては、疼痛コントロールと並行し、気持ちのつらさの適切なアセスメントと、それに基づく精神・心理的対応が重要である。
以上をふまえ、本発表では、現に慢性痛診療に携わる心理職の立場から、がんサバイバーの疼痛治療と、オピオイド鎮痛薬の使用を巡る問題について、心理・社会的側面から現状を概観し、実践可能な心理学的アセスメントと心理学的支援について論じた。