シンポジウムにおいて、地域医療における慢性疼痛への対応について、臨床心理士の立場から医療コミュニケーションと心理学的かかわりについて論じた。
演者はこれまで臨床心理士として、総合病院精神科において精神科医と共に他科からコンサルテーションを受け、依頼主である主治医や病棟スタッフと協働して精神的・心理的対応を行うことを主な仕事としてきた。その中で、器質的問題は乏しいにも関わらず疼痛を強く訴える患者に直接介入したり、そのような患者との接し方に悩むスタッフからの相談機会が多々あった。これらの経験から痛感したのは、心理士が前面に出て対応せねばならないケースは実は意外なほど少なく、主治医や病棟スタッフにちょっとしたアドバイスをすることで状況が改善するケースの方が圧倒的に多いということである。
心理面接と言われるものも、多くは主治医や病棟スタッフが日々の診療の中で、少し意識すれば自然と積み重ねていけるものがほとんどである。 当日はこういった「ちょっとした」ポイントを、実例を交えて紹介し、普段から精神科医や心理職、リエゾンナース達との接点をどう作っていくかについて論じた。
日本運動器疼痛学会誌 11巻4号 S33 掲載