社会的孤立となった慢性疾痛患者に対し臨床心理士による介入を行ったところ行動変容を起こすとともに身体症状も軽快した症例を経験したので報告する。 【症例】49歳,女性。X-4年,誘因なく側腹部 に痛みを感じた。市販の鎮痛薬を服用したが軽 快しなかったため総合病院での検査を受けた。 各種検査に異常なくトラマドール/アセトアミノフェン配合錠(TA錠)を処方された。その 後は近医内科で服薬管理されていた。TA錠の 上限量を内服しても症状軽快することがなく当院総合診療科を紹介受診となった。体位によっ て症状変化することから神経根障害が疑れ,当科に神経ブロックを目的として紹介となった。 当科初診時の問診票では破局化傾向強く,自己 効力感が低かった。その他の問題点としては, 仕事は退職し,外出もほとんどせず,社会から隔離状態にあった。また,家庭内でも会話がなく孤立状態が続いていた。唯一の話し相手であった猫が亡くなってから症状が強くなった。これらから社会的孤立が痛みの破局化等の原因の可能性が高いと判断、またこれらに関して本人は全く苦痛とは感じておらず失感情症も疑った。臨床心理士による介入を開始した結果,精神・身体面ともに改善傾向を認めた。【結語】社会的孤立の慢性疾痛患者に対し臨床心理士の介入を行うことも有効な症例もある。
増田 紗弓, 木村 嘉之, 山口 重樹, 武村 尊生.