(著者)水本 匡起・ケネディ 芳子・渡部 千春
外国人住民も日本人住民も現行の自治体ハザードマップの内容を実感的かつ容易に理解できる方法を探ることを目的とし,自然災害の中でも比較的発生頻度の高い「洪水」の防災対策が急務である岩手県奥州市江刺地区を研究対象地域とした。そして,北上川沿いの低地を構成する地形の理解を通して,特に外国人住民に過去に繰り返して起きた巨大洪水跡を実感的に認知してもらうことを試みた。市内の外国人住民と日本人住民を対象にして,日本語と英語を併用しながら奥州市の地形が示す洪水リスクの説明会を行ったほか,より多くの外国人住民に対象地域の地形が示す洪水リスクを認知してもらうために,地形の見かたがわかるポスターを多言語で作成した。さらに,説明会参加者と共に現地を歩くことで,実際に自然堤防や旧河道の存在を検証し,北上川の現流路から数キロ離れた地点でも過去の巨大洪水跡が見られることを確認した。その後,簡単なアンケート調査を実施して理解度を確かめ,本研究の妥当性について検討した。その結果,現行のハザードマップの内容を実感的に理解するためには,地形環境を知ることが有効であると同時に,ハザードマップを見たことがない外国住民に初めてハザードマップの説明を行う際にも,該当地域の地形環境とその成り立ちに関する説明を付加することが重要であることが示された。