保健教育の授業では,子どもたちのからだ観,生命観に働きかけることが大切である。単に「からだの大切さ」「いのちの尊さ」を語りかけるのではなく,子どもたちがもっているからだや生命についての疑問を掘り起こし,これまでに積み重ねてきた生活や経験をもとにその疑問と向き合わせ,探求した上で科学的な知識と出会わせることが重要である。小学校で授業実践を基に,1)子どもたちの生活や経験を語り合いながら,からだや生命についての疑問を掘り起こすことで,発問が子ども自身の内なる問いとなっていくこと 2)子どもたち同士による異なる経験知や予想による「対話」をさせながら,その学年の子どもに理解可能な「からだの科学」をくぐらせることで,認識を深めていくことができること 3)生命誕生について学び,考え合うことで生命の尊厳やつながりを子どもたちなりの実感を伴った理解へと深めていたこと。死について見つめ,その体験を聞き合うことで生命の尊厳や生きる希望を見出している。その際,教師らが共同して体験を語ることが,より考えを深める契機となること 4)誕生や死に関わる経験や思いを書いたり,話し合ったりすることで,自分自身が癒され,互いに癒され合いながら,自分のからだといのちを受け止めようとすること等の成果があったことを報告した。