人工内耳の普及や学校教育法施行令の改正に伴い、障害のある子どもが柔軟に就学先を選択できるようになった。そのため、難聴の程度が重度の子ども達も、地域の小学校・中学校へ入学・転学することが制度的に可能となった。しかし、補聴機器の性能が向上しても難聴児への個々に応じた特別な支援の必要性はあると考えられる。そこで、本研究では、東北地方6県を対象とし、聴覚障害特別支援学校(以下聴覚支援学校)及び聴覚支援学校以外の学校に在籍する幼児児童生徒の実態を把握するため、補聴機器装用について調査を行った。その結果、聴覚支援学校に在籍する幼児児童生徒の42.4%が片耳または両耳に人工内耳を装用している一方、聴覚支援学校以外の学校に在籍する難聴幼児児童生徒の21.1%が片耳または両耳に人工内耳を装用していることが明らかとなった。人工内耳装用は高度難聴であることが条件となっていることから、高度難聴の幼児児童生徒が聴覚支援学校以外の学校に一定程度在籍しており、各県の聴覚支援学校のセンター的機能による支援が望まれることが示唆された。
庭野賀津子・髙屋隆男・茂木成友・大西孝志