動産の二重譲渡事案において、売主が第二売買契約によって利益を得た場合、売主はその利益を第一買主に「吐き出さ」なければならないという問題意識のもと、当該争点に関する、債権法改正、判例、学説、外国法等の議論を踏まえ、代償請求権、物上代位権、準事務管理の法的手段を検討した。代償請求権の行使は、不能を生じさせた原因と代償請求権の取得との間の因果関係が肯定できないため、認められないと考えた。そこで、所有権に基づく物上代位権の行使を提案したが、第一買主は、第二買主が売主に代金を支払った後には、第二売買代金に物上代位することができないという問題が生じる。その場合には、準事務管理によって解決することが可能であると考え、第一買主は、第二買主が代金を支払う前には、所有権に基づく物上代位権の行使により第二売買代金へ差し押えをして、支払った後には、準事務管理の適用により一般債権者として、第二売買代金全額を取得することができるとの結論に至った。