肢体不自由特別支援学校高等部の重複学級に在籍し、「指示待ち行動」が頻繁にみられた生徒の着替え指導場面における指導者のかかわりをVTRで分析した。その結果、指導者の対象児に対する過剰な支援や、ターゲット行動の生起に結びつかない一方的な言語指示を日常的に頻繁に行っている事態が推測された。そこで、指導方法の妥当性を検討することを目的として、着替え場面の課題分析を行い、対象児が自力で着替えるために必要となる着替え行動の構成要素について細かく分類した。こうして作成した課題分析表を活用して、対象児が自力で着替えできる範囲を調べることを目的とした査定セッションを実施した。査定セッションは、①指導者の先行的な指示を極力避けること、②対象児と指導者の間に物理的な距離を意図的に設けることを条件とした。査定セッションの評価から、対象児は着替え課題のほとんどが自力遂行可能であったことが明らかになった。この結果から、特別支援学校の日常的な指導場面における指導者のかかわりの問題点を指摘し、生徒の自発行動を引き出すためのエコロジカルなアセスメントの有効性について考察した。
pp.65-72.