2021年(令和3年)、新型コロナウイルス感染症で延期となっていた、東京オリンピック・パラリンピック大会が執り行われた。「多様性と調和」というテーマがこれまで以上に高らかに掲げられた大会であった。しかし、直前になっても、その理念に相反したトラブルが続発し、「五輪開会式迷走、響かない理念」といった報道が多く見られた。これらの出来事によって、我が国には、多様性と調和、マイノリティ、ダイバーシティ、ジェンダー平等といった考え方の本質が、まだ十分には浸透していないということを広く知らせることとなった。
一方、近年は多様性をテーマとしたドラマ作品、映画、漫画が数多く見られる。さらに、ジェンダー等についての従前からの慣例を変更するという取組が次々と発表されている。筆者はこれらを素材として学生に特別支援教育や、多様性尊重の考え方を説明している。特に新入生や教育学部以外の学生にとっては、「説明されて初めて多様性の視点があることが分かった」「(ドラマを)一人で見ている時にはマイノリティがテーマになっていると思っていなかった」「気付かずに視聴していた」といった者がかなりの割合でおり、多様性尊重の視点を伝える大切さを感じている。
本稿では、東京オリンピック・パラリンピック大会に関係する多様性に関係した出来事及び、近年、多様性(特別支援教育・障害、LGBT等)に関する事柄がテレビ作品等の中でどのように取り上げられてきたのかについて整理し、それらがもたらした成果について言及する。