はじめに
「なぜ発音指導を行うのですか」と質問されたらどのように答えますか?
昔の私(とても若い頃)は、
① 発音を聞き取りやすくするため
② 明瞭度を上げるため
③(手話について知識がない人に対しても) 意思の伝達がスムーズに出来るように なるため・・・と考えていました。
ところが、これらはすべて聞こえる側にとっての理屈であり、子どもの立場になった答えではありません。
重度の聴覚障害があり、自分の発音をフィードバックすることが難しい子どもの場合、「上手に発音できたね」「もう少し明瞭に発音してみよう」といわれても何がよかったのか、どこが不明瞭なのかを自覚することが困難です。
現在は手話を理解し、使用してくれる人が多くなってきたから、聴覚障害児に発音指導を強制させるべきではないという考え方も間違ってはいない気がします。本稿では、なぜ聴覚障害児に対して発音指導を行うのか、その目的について考えてみたいと思います。乳幼児相談や幼稚部で日々、発音指導をし、保護者に発音指導の必要性を説明する先生、小学部以上の子どもたちに誤音矯正という形で発音指導をしている先生は、是非ご一読ください。