令和3年度に開催された東京オリンピック・パラリンピックでは、オリンピックの開会式に手話通訳が付かないという問題が起きました。無観客で開催されていた国立競技場のスクリーンには手話通訳が映っていたのですが、お茶の間の聴覚障害者にはその手話が届いていませんでした。
当初は「開会式の映像はIOCの関連組織である五輪放送サービス(OBS)が作成しており、その映像をそのまま使用したため手話通訳を付けられなかった」「長時間の生放送のため手話通訳を付けるのが困難」「手話の映像で画面が見にくくなる」と説明(毎日新聞2021.8.7)がありました。
しかし、韓国、カナダ等のテレビでは、自国の手話を付けた放送が行われており、技術的に手話を付けることは無理なことではありませんでした。手話通訳については、3月の聖火リレー出発式でも同じような問題があり、首相、五輪大臣が「配慮に欠けていた」と国会で答弁していたのですが、開会式ではそれが生かされませんでした。
これら一連の出来事はマスコミ等で大きく報道され、結果的にオリンピック閉会式、パラリンピック開・閉会式には、Eテレにおいて手話通訳が付いた放送が流れました。
この問題も、開催スタッフやテレビ局等の担当者に「聴覚障害とはどのような障害なのか」ということを具体的に思い浮かべることができる人が少なかったためだと思います。
このような問題をなくしていくためには聴覚障害の特性や必要な合理的配慮についての理解・啓発を推進していくことが強く求められます。聞こえにくさがある人の置かれている状況を自分の事として考えられるようになるということが大切です。