聴覚に障害のある子どもにとって「読話」の能力の有無は、他者とコミュニケーションするときに重要な問題となる。聴覚障害の程度が重度になるほど、視覚に頼らざるをえない部分が多くなるからである。そこで、聾学校では子どもたちが話し手の口元に注目し、その口形を弁別できるようになるために「読話指導」を行っている。ところが、「読話」という「見える能力」が効果的に機能するためには、思考力や言語力など「見えない能力」の指導が必要になる。本章では、聾学校でどのような指導が行われているのかを紹介しながら、聴覚に障害のある子どもの「見える能力」と「見えない能力」に関して検討して行く。
第2章、聴覚障害児の「見えない能力」に対する教育、総p.208 pp.31-51
渡部信一,植木克美,大西孝志,中島平,佐藤克美,髙橋信雄