『日本霊異記(以下『霊異記』)』には、仏教的真理(法身仏)を内包した仏菩薩像が霊験を顕すという内容の説話が複数存在する。このような発想自体は中国仏教思想に先蹤を認め得るものの、「仏像が悲鳴をあげる」という霊験は『霊異記』独自の発想のようだ。
小稿では主に『霊異記』中巻二二の説示における『大般涅槃経(だいはつねはんぎよう)』からの引用文に着目し、仏菩薩像が肉体を有する釈迦如来(報身仏)に、仏像を盗み破壊した者が一闡提(いっせんだい)へと擬えられる点を手がかりに、「肉身」としての仏菩薩像イメージを明らかにした。