論文

基本情報

氏名 冨樫 進
氏名(カナ) トガシ ススム
氏名(英語) Togashi Susumu
所属 教育学部 教育学科(中等教育専攻)
職名 准教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

題名

「文殊の導く求法巡礼――円仁の〈夢〉観念をめぐって――」(査読有)

単著・共著の別

単著

概要

円仁『入唐求法巡礼行記(以下『行記』)』は、承和5年(838)から同14年(847)までの足かけ十年に及ぶ巡礼行の記録である。『行記』は、帰国後一定の時間を経過した段階で円仁自身の手による加除訂正が行われているとみられるものの、巡礼遍歴および円仁の言動については大幅な変更が行われた形跡は認められない。円仁は入唐以前、天台止観行の実践者として一定の評価を獲得しており、入唐留学の目的も天台山における天台教学の研鑽であったにも関わらず、最終的に首都・長安において本格的な密教教学の修得を果たして帰国している。本稿では、唐における円仁の修学目的が天台教学から密教へと変化し得た要因として、五臺山における文殊感見体験と、その巡礼過程における夢見体験とに着目した。円仁の師・最澄は晩年の著作『顕戒論』において、文殊信仰を媒介として、自身の提唱する大乗菩薩戒を末法相応の戒律として宣揚した。最澄の主張において文殊とは、行者に対して滅罪・成仏を保証する存在であった。さらに、『文珠師利般涅槃経』では、乱心の行者であっても夢中で文殊に値遇することで、不退転の境地へと導かれることが明記される。巡礼過程における再三の夢見体験、および五臺山での文殊感見体験によって、円仁は自らの巡礼行の妥当性を再認識し、長安における密教修学に専念することができたものと考えられる。
pp1-18

発表雑誌等の名称

『日本仏教綜合研究』第16号(日本仏教綜合研究学会)

発行又は発表の年月

201705