「『日本霊異記』における「現報」観――その「宿業」観との関連において――」(査読有)
『日本霊異記』における宿業観は、本来過去世から現在世、現在世から未来世へと展開していくはずの三世観が、現在世を基準に時間軸を逆行する形で過去世へと展開していく点に特徴が認められる。このような宿業観は、現在世において被った悪報の原因を現在世内に見出し得ない場合に適用されるものであり、一般的に現在世内で完結する因果関係についてのみ用いられる「現報」という概念を拡大し、純粋な学問論争から生み出された三世観では説明不能な奇事の説明を可能とする意義を持つものである。pp.1-13
『文藝研究』第152号(日本文芸研究会)