吉田一彦編『変貌する聖徳太子――日本人は聖徳太子をどのように信仰してきたか』(平凡社 2011年)の書評。第一節では本書の構成および目次を掲出。第二節では、本書の中核となる聖徳太子信仰に対する考え方として、これまで伝承時の誤解・誤記として片付けられていた聖徳太子にまつわる異説間の矛盾・齟齬にまつわる問題に対し、それらの矛盾・齟齬をそのまま前近代における聖徳太子関係寺院間におけるせめぎあいの象徴として捉える編者・吉田氏の所論を「霊場」「巡礼」論と関わらせて評価する。第三節では各論考の梗概を紹介した上で、第四節で論文集全体の研究史上の意義についてふれる。
pp.32-37