「八世紀の伝記における君臣関係――『藤氏家伝』と『延暦僧録』を中心に――」(古代前期部門,第二六回研究発表大会・発表要旨)
『日本文学』第55巻6号(日本文学協会)
本稿では、8世紀に成立した藤原鎌足・定慧(鎌足長子)・藤原武智麻呂の伝記『藤氏家伝(以下『家伝』と略記)』の分析を通じて、藤原仲麻呂が理想視した関係を明らかにすることを目標とした。その結果、『家伝』では「雄略」という資質が中大兄と鎌足とを結びつける紐帯であると同時に以後の皇室と藤原氏との関係の礎としても機能している点、更に鎌足と武智麻呂との間に想定された諫臣としての系譜が、仲麻呂を当主とする藤原南家と天皇家との密接な君臣関係の根拠として機能している点の2点を明らかにした。p.75