(報告発表)『日本霊異記』における「天台智者」への関心
日本思想史学会平成13年度大会(於, 大阪府吹田市・関西大学千里山キャンパス)
『霊異記』編纂者景戒は、下巻第三十八縁において「天台智者の甚深の解」を「災を免るる由」「災を除く術」として位置づけ、天台教学に対して強い関心を表明する。本報告では、現世における因果応報思想の貫徹を説くという『霊異記』の編纂意図を重視し、景戒によって理想視された「天台智者の甚深の解」の内容を、智顗『摩訶止観』『天台小止観』に説かれた天台止観の成就によってもたらされる、三世の因果律を透徹することを可能とする神通力にあると考えた。